家賃保証は必要ですか? サブリースは? 結論:いらない。

 この質問は、よく大家さんから受けることが多いです。また、何の疑問も持たずに家賃保証やサブリースを使っている大家さんも多いのが事実です。

 私の結論を先に言うと、「いらない」です。

 

 サブリースのわからない方に少し説明すると、リースと言っても、自動車のリース契約とは、違います。

 

 これからアパート経営をする人にとって一番の心配事は、建てたアパートに入居者が入るかどうかです。その心配事を軽減するために事前にサブリース会社と契約して、建築後にアパートを一括でサブリース会社に借り上げをしてもらい、想定家賃の80~90%をサブリース会社から毎月大家さんに送金するような契約を結ぶようになります。

 

 大家さんは入居者の有無にかかわらず、サブリース会社が一括借り上げしてくれているので、安心して建築行為ができる。

 サブリース会社は借り上げた物件をエンドユーザーへ又貸しします。ここで得られる回収家賃と大家さんに支払う家賃の差額がサブリース会社の収入となるわけです。

 サブリース会社が怖いのは、入居者が退去した後、空室状態が続くことです。家賃が入らないとその分赤字になります。だから頑張って次の入居者を探さなければなりません。サブリース会社は利益を最大化するために、空室を出さないように募集活動をするようになります。

 

 家賃保証もサブリースの中核となる仕事です。ここでは、ほぼ同義と思っていただいて結構です。

 

 ところで、アパート経営は、事業の一つです。金融機関はその事業にお金を貸すのであって、実際にはアパートの建築費用にお金を貸しているのですが、事業に貸しています。つまり事業性資金として融資していることになります。

 

 大家さんは、自分は何千万も借り入れをして、リスクが高めの事業をしているんだなぁ、という認識が必要です。借金してアパートを建築するわけですから。利益が充分見込めないとやるべきではありません。当たり前ですよね。

 

 大家さんは、そのリスクをヘッジするために、サブリース会社を収入保障として、入れる(噛ます)のですから、経営の根幹を他人に任せるという、なんとも情けない話です。自らハイリスク投資をしているのに、リスクをヘッジすれば、リスクプレミアム(リスクを取った人が得られる利益)がなくなってしまいます。

 

 新築アパートの場合、新しいだけで価値があります。これを新築プレミアムと呼びます。周囲より高い家賃で募集しても通常、入居者は苦労せず集まることが多いです。(よほど、建築前の市場調査が間違っていなければ)新築から10年ぐらいは、ほぼ満室稼働できるのです。そのぐらい、新しいということは、価値があります。

 

 アパート建築で重要なことは、建築前に勝負が決まっているという点です。どんな家・テナントを建築するのか、たとえば、学生の町なのか、ファミリー層が多いのか、駅チカか、郊外か、人口の伸び率は?など、総合的に判断して、間取りやスペックを決めて建築するのが経営の90%と言っていいほど重要です。残りの10%は、変わりゆく社会の流れ読んで、今ならWi-Fi無料にしたり、宅配ボックスを入れたり、ペット共生にしたりと、価値を生み続ける住宅設備や主にソフト面での工夫が必要です。

 入居者はお客様なのですから、新しい価値を提供して、長く満足していただける工夫が必要。

 ディズニーランドは一番いい例です。シンデレラ城は築40年の築古物件ですが、今でも価値を提供しつづけています。

 

 お金の話をすれば、新築10年は、高い家賃で回収をどんどんすすめ、債務をどんどん減らすか将来の設備投資に備えて貯蓄する時期です。この時期に、10~20%のサブリース料を支払ってしまっては、おいしいカニみそを食べずに、細い手足だけ食べているようなものです。

 

 利益のうまみはサブリース会社に流れています。

 

 また、サブリース会社が未来永劫家賃保証をしてくれるなら、最初から任せる意味もありますが、そうは行きません。

 

 ほとんどのサブリース会社は、当初10年間の新築プレミアム期間は一定保証をしますが、その後5年おき、3年おきに、家賃見直しが入ります。また、外壁塗装やスペックUPの為の工事をお願いされるケースがあります。

 

 これは、ある意味当然のことです。建物がボロになっても、当初家賃保証する、こんなお人よし会社はありません。また、築年数が経過すれば、するほど、周りには新築物件が増えるので、見直し時期を短くするのも会社を守るうえで当然の話です。

 

 大家さんから見れば、サブリース会社との条件の合意が得られなければ、サブリース終了となります。大家さんは保証がなくなるのが嫌なので、言うことを聞かざる負えません。

 これが10年、20年、25年、30年と続きます。最後まで行くと、そろそろ建て替え時期ですね、と言われて、再度建替えを促されます。

 アパートの借り入れ返済は、一定額なので、当初収入から返済額を控除した金額に幅があったのに、だんだん保証家賃が安くなりますので、毎月の手残りが少なくなってきます。数千万円の借り入れをしているのに、毎月数万円しか儲からない、こういう大家さんは実際多くいます。

 

 それに引き換え、アパート業者は、建築時に儲けます。(数千万円)サブリース期間中も家賃をピンハネして儲けます。(ピンハネという言い方は悪いかもしれませんが、大家からするとピンハネです。)仕様が古くなればリホームを提案しここでも儲けます。最後、建て替えで儲けます。

 サブリース会社と建築業者は非常に関連が深いか、グループ会社が多いので、グループとして一人の大家さんからしっかり儲けることができます。大家さんにとって、果たしてうま味はあるのでしょうか。

 

 よく聞く話で、相続対策でアパート建築する方がいますが、そもそも、アパート経営が主体で、相続税対策はその副作用・副反応なのですから、あまりもうからなくてもいいから、相続対策で建築するというのは本末転倒の話です。ここでは長くなるのであまり詳しく触れませんが。

 

 まとめると、サブリースしてもらわないと、安心して建築できないくらいなら、アパート経営という枠組みに足を突っ込むのは危険!という結論になります。誰だって数千万円の借金して収益物件を購入したり、アパートを建てるのが怖くない人はいません。私だって怖いです。だから、サブリース会社も怖いので、当初10年しか家賃保証をせず、見直しできる契約内容になっているわけです。みんな怖い!みんなリスクを減らしたいのは同じです。

 

 だからこそ、新築プレミアムを獲得するためには、リスクを引き受ける必要があります。その分の報酬が多く得られます。この新築プレミアムは、即ちリスクプレミアムです。リスク背負った経営者だから、得られる大きな利益の事です。賃貸経営の利益とはこれを指すのではないでしょうか。

 

 結論、家賃保証で仮の安心を得るよりも、建築前によく市場調査をして、10年後でも選ばれる建物を建築しましょう。これ、簡単なようで難しい。だから、経営なんです。経営の面白みも出てくると思います。

 アパートの建築はすべて自己判断・自己責任です。安易に人に任せて、安心を売るよりも、ドーンと投資して、ガボッと儲けることを考えましょう。つまり、覚悟を持って経営する!これしかないと思います。

 

 余談ですが、サブリース会社が潰れるリスクもあります。ピンハネ率が低いサブリース会社は大家さんにとって喜ばれますが、経営的にはちゃんとピンハネしないといけない!ということになります。

 

 大家さんがサラリーマン大家の場合、経営に時間的にかかわれないのは当然です。だからこそ、良きアドバイスのできる管理会社が必要です。管理会社の管理料(家賃収入の約5~7%ぐらい)は必要経費だと思います。でも家賃保証までは任せすぎです。

 

 尚、アパート経営・投資はどこまでも自己責任です。私の意見が正しいか間違っているかも含めて、ご自身で判断して行ってください。

  最後にアドバイス。ノーリスクのアパート経営なんてありません。やるなら、覚悟を持ってやりましょう。